便秘について
症状は、排便が週3回未満になる「排便回数の減少」と、排便時に過度のいきみが必要・便が硬くてなかなか出しにくい・出ても残便感が残る・・・などの「排便困難」の2つです。少しでも便が出ていれば、便秘はない・・・と思っている方が多いですが、適切な量の便が適切な出方で出ず、上記のような症状を伴う場合は、便秘の範疇となります。
例えば・・・強くいきんでも少ししか出ない、下剤や浣腸などをしないと出ない、食事に気を付けても解消しない、毎日お通じはあってもすっきりしないなど、便秘の状態はそれぞれ異なります。
当院では、苦しくない大腸カメラなどによって便秘の原因を確かめ、それに合わせた適切な治療を行っています。生活習慣の改善、漢方薬や作用機序の異なる薬などによるトータルな治療を行っていますので、お悩みがある方はお気軽にご相談ください。ちなみに、20代以上の女性の半数以上は便秘で、さらに年を重ねるごとに頻度は増えますが、男性でも70代を超えると7割以上は便秘になるとされています。
便秘の原因
便秘で特に注意が必要なのは、疾患の症状として便秘が起こっているケースです。大腸ガンでは腸が狭窄(内腔がつまる)して便秘を起こすことがあり、他にも、腹部の手術後に癒着などによって便秘になることもあります。また、甲状腺機能低下・糖尿病・パーキンソン病など消化管以外の病気の症状として現れているケースや、服用している薬の副作用として生じていることもあります。大腸ガンの早期発見にもつながりますので、大腸カメラを受けて原因を確かめることが重要です。
それ以外の便秘は、運動不足、食事内容、便意の我慢、ストレス、下剤など市販薬の長期間服用など、様々な要因が絡み合って生じています。
便秘の種類
便秘の原因は複数あって、機能性便秘3種類と器質性便秘という4種類に大きく分類することができます。こうした原因がわかっていないと適切な治療はできません。ご自分の便秘のタイプや原因を把握することで効果的な治療が可能になります。
[弛緩性便秘]=大腸の蠕動運動低下
腸管の緊張がゆるむと、内容物を先に送る蠕動運動が十分に行われなくなって便が大腸内に長くとどまるようになります。大腸に長くとどまった便は水分を過剰に吸収されるため硬くなり、排出しにくくなります。女性や高齢者に多いタイプの便秘です。大腸カメラでは、ダラッとした張りがない感触の腸であることが多く、挿入時に大腸が伸びやすい傾向があります。 主な症状として、おなかが張る、残便感、食欲低下などがあり、肩こり、肌荒れ、イライラなどの症状を起こすこともあります。
発症の誘因になるのは、運動不足、水分不足、食物繊維不足、筋力低下、極端なダイエットなどです。
[痙攣性便秘]=大腸の過緊張
消化管の機能をコントロールしている副交感神経が過度に興奮して腸管が緊張し、便がうまく先に送られなくなってウサギの糞状のコロコロとした硬い便になります。大腸カメラでは、大腸が締まり、カメラを逆方向へ押し出そうとするように動き(腸管スパスム)が強く、大腸の動きを押さえる薬剤を使ってもなかなか効果がないため、検査に難渋したり、痛みが出やすいことが多いです。主な症状は、食後の下腹部痛や残便感です。便秘と下痢を繰り返すケースもよくあります。
発症の誘因になるのは、環境変化などのストレス、過敏性腸症候群などです。
[直腸性便秘]=直腸に便が停滞
便が直腸に達しても便意が起こらず、直腸に便がたまってしまって排出が難しくなるタイプです。便意を我慢することが多いと発症しやすく、他に切れ痔などで排便に痛みがともなう場合、無意識に便意を我慢して発症することもあります。大腸カメラでは、直腸部分が肛門にかけて袋状に大きく拡張していることが多く、普通の方の2-3倍くらいの大きさになっていることもあります。他に、高齢者や寝たきりになって発症するケースもあります。長期に便が同じ部位に停滞すると、「宿便」といって、便が石のように硬くなり、それが同じ部位を圧迫し続けることで、その部分に潰瘍を作って、大量下血する場合もあります(宿便性の出血性直腸潰瘍)。寝たきりや、寝返りを打てない、など同じ体勢が続くと起こしやすくなります。
器質性便秘
腸閉塞(イレウス)、大腸ガン、腸管癒着などの器質的な原因によって腸管に通過障害が起こっています。こうした便秘で刺激性下剤を服用し、強制排便をしようとすると、つまっているところの手前で大腸がやぶれる、腸管穿孔を起こす可能性があり大変危険です。血便や強い腹痛、吐き気や嘔吐などを伴う場合には、重篤な病気の可能性もありますので、お早めに受診してください。
便秘の治療法
食事を含む生活習慣の改善と薬物療法を行いながら便秘の解消を図り、再発を防止します。身体を動かさないと腸も動きにくくなるため、適度な運動を習慣にして、便意があったら必ずすぐにトイレへ行くなどの生活習慣改善も重要です。そして、特に重要なのは食事です。
食事
水分・食物繊維・善玉菌となる乳酸菌をたっぷりとってください。栄養バランスがいい食事を3食、しっかりとるようにしましょう。また脂肪も適度にとることで腸の働きを活性化して、スムーズな排出が可能になります。ダイエットをしている場合も適度に脂肪分を摂取してください。
食物繊維
消化吸収されないため便の量が増えて排便しやすくなります。また有害物質を吸着するためデトックス効果も期待できます。さらに、糖や脂肪分の吸収を遅らせる働きもあるため、食後血糖値の急上昇を防ぎ、コレステロール値を抑える効果などもあります。 食物繊維は水に溶ける水溶性と、水に溶けない不溶性に分けられます。不溶性食物繊維は、玄米・野菜類に多く含まれていますが、便秘のタイプによっては便が硬くなり過ぎて逆効果になるケースもあります。水溶性食物繊維は、わかめやきのこ、納豆、ごぼう、おくら、アボカドなどに多く含まれていて、便をやわらかくしてくれます。便秘のタイプなどによって摂取が望ましい水溶性と不溶性のバランスが少し異なるケースもありますので、受診して医師のアドバイスを受け、ご自分にあったバランスで食物繊維をとるようにしてください。
腸内細菌叢
便の固形成分は、食べ物のカスである食物繊維と腸内細菌やはがれた腸粘膜で構成されていて、そのうち食物繊維は半分以下です。善玉菌として知られている乳酸菌は、腸内で乳酸を放出して周囲の環境を弱酸性にして悪玉菌の発生を抑制して善玉菌の増加を促します。こうしたことから、腸内細菌を増やすことで便の量が増えて楽に排出できるようになります。 乳酸菌はチーズやヨーグルトなどに含まれる動物性乳酸菌、漬物・みそ・しょうゆなどに含まれる植物性乳酸菌があります。腸内環境を整えるためにはどちらも不可欠ですので、バランスよく両者をとるようにしましょう。
薬物療法
便秘の解消で用いられる薬剤には、便をやわらかくしてボリュームを増やすもの、腸の蠕動運動を正常に導くものがあります。便をやわらかくしてボリュームを増やす代表的な薬剤にはマグネシウム剤(酸化マグネシウム:カマグ)があります。蠕動運動を活発にするものは効果が出やすいのですが、薬がないと蠕動運動が起こせなくなって便秘を悪化させてしまうことが多く、服用に注意が必要です。当院では、漢方薬や市販薬とは作用機序の違う薬や効果の出方が異なる薬などを組み合わせて、状態や症状、お悩みの内容に合わせた処方を行っています。また、再診時にも処方を微調整してより適した治療ができるようにしています。
便秘治療の対応をしています
さかい胃腸・内視鏡内科クリニックでは便秘の治療を専門的に行っております。「深刻な便秘で困っている」「他院で治療してもなかなか改善されない」そのような方は是非一度当院へお越しください。医師によって便秘に対する考え方や治療方法は異なる場合が多く、医療機関を変えることで治療が進む場合があります。また当院では大腸カメラ検査も視野にいれた治療を行う分、専門的なアプローチが可能です。便秘は深刻な消化器疾患の可能性も隠れておりますので、つらい時は早めに当院へお越しください。