ここでは
胃・大腸ガンにスポットを当てて、
ご説明します。
胃・大腸ガンの場合も、
治療法を選ぶときの考え方は、
他のガンと同様です。
前回お話した通り、ポイントは、
■ガンの進行具合
■そのガンの性格・性質
の2つです。
進行具合いに関しては、
各症例ごとで異なります。
では、
胃・大腸ガンの性格・性質
とはどんなものなんでしょうか?
当然、例外もありますが、
ガンとしての基本的な性質は、
②抗がん剤:そこそこ有効
③放射線治療:いまいち効きが悪い
となります。
そして、
最もからだの負担が少なく、
有効性が確実な治療法は・・・
やはり、
①:切る(切除)となります!!!
少し説明を加えるなら、
「取り残しのない確実な切除」です。
では、その具体的な方法ですが、
1)ピンポイントで小さく取る
2)病変の周囲ごと大きく取る
の2パターンがあります。
もう少しわかりやすく言いますと、
ガンがある部分に対して、
1)内側から、最表層の一部だけ
を切り取る(内視鏡的切除:EMR、ESD治療など)
2)外側から、全層もしくは、その周囲ごと
切り取る(腹腔鏡・開腹手術:いわゆる外科手術)
となります。
そして、
当院を含めた消化器内科(胃腸・内視鏡内科)で取り扱う治療は、
①-1)最表層の一部だけを切り取る治療で、
内視鏡(胃カメラ・大腸カメラ)で治療します。
内視鏡治療では、
通常の胃・大腸カメラ検査と同様に、
くち・肛門からカメラを入れて、
内側から切っていきます。
現在、
広く行われている内視鏡的治療には、
以下の2つがあります。
■EMR(内視鏡的粘膜切除)
:小さめの大腸ポリープなど
⇒ 通常は数日の入院が必要
(当院では症例を選んで、日帰り手術を行っています)
※詳細はコチラ
■ESD(内視鏡的粘膜下層剥離)
:比較的大きく、浅めの早期の胃・大腸ガンなど
⇒ 設備が整った病院で、約1週間ほどの入院が必要
(当院では行っていません)
少しイメージがしやすいように、
ここではイラストではなく、
実際に私が治療した時の内視鏡写真で説明していきます。
◆EMR(内視鏡的粘膜切除)
胃でも行うことはありますが、
ほとんどは大腸ポリープに対して行わなれます。
( ⇒ ※詳細はコチラ)
5mm大の大腸ポリープ
①まず、ポリープの下に液体を注射して、プゥーっとポリープごと盛り上げます。
局注(きょくちゅう)といいます。
こうすることで、切除した時に、大腸に穴があく(穿孔)するのを予防します。
局注後
②次に、
スネアと呼ばれる細い針金の輪っかを
ポリープにかぶせて、ギューっと締めていきます。
そして、通電してジュッと焼切ります。
取り残しがないよう、少し正常な粘膜ごと切り取るのが理想です。
※ちなみに、
大腸粘膜には痛覚はないので、
切るときに痛みはありません。
スネアリング中
切除(EMR)後
③切った部分には、丸い形にキズができます(粘膜欠損)。
それをクリップというホッチキスみたいなもので、パチン・パチンと創を縫縮(キズを寄せて止める)をして終了です。
クリップをまったく使用しない施設もありますが、
どちらが良いかは正確には証明されていません。
クリッピング後(終了)
◆ESD(内視鏡的粘膜下層剥離)
こちらは浅い早期胃癌や、
EMRでは大きすぎて取りにくいような早期大腸癌・表在型食道癌などに行います。
胃・大腸などの粘膜は、
細かく分けると5層に分けられますが、
表層(内側)から3番目の層を「粘膜下層」といいます。
この3番目の層の深いところをザクザク切って、
ガンのいる1番目・2番目の層を剥ぎ取っていきます。
これが「粘膜下層剥離:ESD」です。
文章にすると、
まるで神業(かみわざ)かのように聞こえますが、
やってみると、意外とサクサクできます。
もちろん簡単ではありませんが、
「言葉にするより、切るが易し」といった感じです。
奥行の長径が8cm以上ある大きな平坦ガン病変
①こちらは内視鏡用の電気メスのような器具を使用します。
まずは病変の周囲にマーキングという印を焼きながらつけていきます。
②それを目印にして、
3番目の粘膜下層まで切っていき、
その層の深さに合わせて、
その上のガン部分を少しずつ剥ぎ取ります。
③本例のようにかなり大きなキズ(直径10cmほど)になりますが、
1-2日で食事が食べられ、
1週間ほどで退院可能です。
大きさにもよりますが、
キズは約2ヶ月ほどできれいに治ります(キズアトは残ります)。
切除標本
切除後の創部(人工的な潰瘍)
2ヶ月後(大きなキズだったので、まだ不完全治癒)
半年後(完全に治癒)
以上の2つが内視鏡的治療の2本柱になります。
後述する外科手術よりも体の負担が少なく、素晴らしい治療なんですが、
※内視鏡治療ができるかどうかは、
実は、
ガンが見つかった時点で、
ほぼ決まっています。
このあたりは、次回、説明いたします。
★まずはご自身の健康に関心をもち、簡単な検査からでいいので、検査を受けましょう!!
当院は
内視鏡検査(胃カメラ・大腸カメラ)
の専門施設です。
経験豊富なスタッフ
(内視鏡専門医、内視鏡専門技師)
と、
最新の医療機器・設備を整えて、
あなたをお待ちしています!